日本民俗音楽学会第10回民俗音楽研究会(改訂)

ご挨拶

「民謡の過去・現在・未来―伊勢音頭を事例として―」

民俗音楽研究会では、民俗音楽の伝承に焦点を当てながら、地域での事例や社会教育、学校教育等の場における民俗音楽伝承の取り組みや伝承力の創造について、熱心な議論を行ってきました。2年に1度開催されてきたこの会も今年で10回目を迎えます。この記念すべき第10回民俗音楽研究会を伊勢にて開催いたします。サミットでも注目されている伊勢。伊勢といえば伊勢音 頭があります。この伊勢音頭を事例としながら「民謡の過去・現在・未来―伊勢音頭を事例として―」をテーマに語り合いたいと思います。

伊勢音頭は民謡としてあまりに有名ですが、実に多様な側面をもっています。また、お伊勢参りをはじめとし、伊勢の歴史や文化と深く関わりながら現在に伝承されています。伊勢音頭やその系統の民謡・民俗芸能は、全国各地に伝えられ様々に変容しながらそれぞれの土地に根付いてきました。この意味において伊勢音頭は日本の民俗音楽を語る上で、きわめて魅力的な素材でも あります。伊勢音頭を核にしながら民謡の歴史や伝播・普及の問題を学び、民謡の本質にふれつつ、現在の状況や存在価値、さらに未来にむけた継承の方法、といった課題について意見を交わしましょう。それぞれの会員の研究や実践の成果、日頃の思いやアイディアを持ち寄って、明日のために議論を尽くしたいと思います。

会場となる旅館「麻吉」は、創業200年の伝統を持つ登録有形文化財の建築物で、大勢の芸妓が伊勢音頭を踊っていた昔の遊郭の雰囲気を持つ老舗旅館です。会員諸氏の多数の発表と参加をお待ちしています。(調査研究委員会)

日時

平成28年8月27日(土)・28日(日)

会場

  • 場所:旅館「麻吉」
  • 〒516-0034 三重県伊勢市中之町109
  • TEL: 0596-22-4101

主催

日本民俗音楽学会

研究会スケジュール

第1日目 8月27日(土)

12:30 – 受付開始
13:00 – 開会
13:10 – 基調講演「伊勢音頭の持つ意味(仮)」(小島美子)
14:20 – 報告1「そもそも伊勢音頭とは―旋律から見た伊勢音頭―」(高橋隆二)
14:50 – 報告2「伊勢における伊勢音頭(ヤートコセー)ー伊勢音頭中興の祖、畑嘉聞の業績を中心としてー」(岡田美智子)
15:20 – 発表1「西条祭りの伊勢音頭」(岩井正浩)
15:50 – 発表2「七尾大泊町春祭りの伊勢音頭道中唄」(宮川隆之(橋屋まさる))
16:20 – 発表3「民謡と俗曲のはざまの伊勢音頭」(寺田真由美)
16:50 発表終了/実演準備
17:00 伊勢音頭実演
– 「伊勢音頭の会」による《伊勢音頭》
– 「伊勢古市木遣り保存会」による《水揚げ木遣り》
18:30 懇親会(自由討議)

第2日目 8月28日(日)

9:30 – 発表4「伊勢音頭の定着と小学校の取組み―東京都板橋区の「四つ竹踊り」を例に―」(小野寺節子)
10:00 – 発表5「学びの共同体としての中学校音楽授業と地域の関係―郷土の民謡「切り音頭」の授業実践より―」(山本真弓)
10:30 – まとめの討論
12:00 – 閉会
☆研究会スケジュールの時程・内容は,変更される場合があります.

申し込み

参加(宿泊)申込

  1. 下記申込先に、以下の内容を明記し、はがきか電子メールあるいはFAXでお申し込みくださ
    い。なお、参加経費につきましては、下記「会費」を参照して下さい。
  2. 氏名
  3. 連絡先(電話番号、FAX、電子メール)
  4. 参加日程、形態(以下のいずれかを明記してください)
    • 全日程参加(・宿は「麻吉」を希望します/・宿は個人で手配します)
    • 1日目のみ参加(・懇親会出席します/・懇親会出席しません)
    • 2日目のみ参加
    • その他(具体的にお書きください)
  5. 振り込み予定金額
  6. その他(到着時間等、連絡事項)
    • 申込先:伊野義博
    • 〒950-2181 新潟市五十嵐二の町 8050 番地 新潟大学教育学部
    • TEL.FAX: 025-262-7043
    • E-mail: ino@ed.niigata-u.ac.jp
    • 申込締切: 終了しました8月10日(水)必着(郵送、電子メール、FAX 等)

会費

参加費用

  • 旅館「麻吉」で宿泊参加の場合:17,000円(懇親会費・会議費・飲み物代・朝食・参加費を含む)
  • 懇親会と研究会に出席の場合:8,500 円(懇親会費・会議費・飲み物代・参加費を含む)
  • 研究会のみ出席: 一日 2,000 円

参加費支払い

  • 当日、受付にて現金でお支払いください。

その他

  • 麻吉の宿泊人数は、22 名までです。宿泊については、先着22名で打ち切らせていただきます。宿泊の手続きは、実行委員会で行います。
  • 麻吉に宿泊の場合、一人部屋はなく、原則として二人以上の相部屋となります。部屋割りのご希望は伺いますが、基本的に実行委員会にお任せ下さい。
  • 1日目及び2日目の昼食は各自でお願いします。
  • 2日目の昼食はつきません。

情報及び交通ガイド

古市(ふるいち)と麻吉(あさきち)

古市は伊勢市にある「外宮」(豊受大神宮)と「内宮」(皇大神宮)を結ぶ古市参宮街道のほぼ 真ん中に位置するところである。江戸時代の「お伊勢参り」では参拝後、「精進落とし」と称して 大いに賑わったのがこの古市である。東西歌舞伎役者の登竜門としての芝居小屋や妓楼が軒を連 ねまさに不夜城のような賑わいをみせた時代もあったという。また、十返舎一九の「東海道中膝 栗毛」など多くの文芸作品にも登場する。

このお伊勢参りから、「伊勢音頭」は生まれたのである。その伊勢音頭は式年遷宮における御木曳の木遣り唄から出来た「ヤートコセー」(現在一般的に歌われている伊勢音頭)や、妓楼の総踊りで歌われた伊勢音頭(現在、鹿海町、朝熊町の盆踊りで歌われている河崎音頭)、そして間の山節などもある。伊勢音頭の内容は全国に伝わったものなども含めると、実に多種多様に存在する。 伊勢音頭が民謡の中で、時に「大民謡」と称される理由がここにある。

今回の研究会は江戸の情緒を残した「麻吉」で「伊勢音頭の会」の古調伊勢音頭なども鑑賞して戴き、当時の雰囲気も少なからず感じとって戴けると思う。「麻吉」のご紹介については、「麻吉」の旅館パンフレットが最もよいと思うので、その文章を記したいと思う。

麻吉のこと

いつの頃かは、はっきりしませんが古市に「麻吉」 が料理店として営業を始めました。その辺りを「長峰」 また「古市」とも言いました。江戸時代の中頃隆盛を 極め、京の島原、江戸の吉原、大坂の新町、長崎の丸山と並び称された五大遊郭の一つになるにつれて「古市」の名が世間に知れるようになった頃、当時の中之 地蔵町、現在の中之町の一隅に「麻吉」として店を構えたのでしょうか。麻屋吉兵衛の頭文字を採っての屋 号だったらしいのですが、ひょっとしたら、元々布の 麻を扱う商売をしていたのかもしれません。伊勢の地 は神宮さんに納めるための絹と麻を取り扱う店が以前からあちこちにあり、そのうちの一軒だったのでしょうか。この麻屋吉兵衛は世襲制で何代も続いていたようで、大正時代頃迄は店主がこの名前を受けついでおります。現在は果たして何代目にあたるやら。最近に なって創業二百年と銘打ってはいるものの、それもは っきりわかりません。ただ、天明二年(一七八二)の「古市街並図」という地図に「麻吉」の名があり、やはりその頃には料理店として営業していたのでしょう。十返舎一九の「東海道中膝栗毛」で弥次さん喜多さんが 古市へ行くというので「柏屋」(古市五大妓楼の一つ) の松の間にある画僧月僊の松の画を見に行こうという 時「麻吉へお供しよかいな」などという場面がございます。執筆以前に伊勢へやって来たか、人づてに聞いていたかして「麻吉」を知っていたのかもしれません。

麻吉の資料館には調度品がいくつか並べてありますが、それらは当時の古市がどれほど栄えていたかがわかるものではないでしょうか。日本各地の漆器やその他の器はどのようなお客様にも喜んでもらえるように、その頃の主人が全国から取りそろえていた様です。また、それらは展示品ではなく、今でもご指定いただいたお客様には使用しているものです。従って料理につきましても、その当時の献立に忠実にお出しするようにしております。その旨はお客様にも御理解頂くと大変有難いことと思っております。    主人啓白

皆様「お伊勢参り」にどうぞおいで下さいませ。 (記 岡田美智子)